なぜdigraphが必要なのか
phonics で挫折させないために
前回に引き続き、phonics 指導について書きます。
前回はphonics 指導の大切さを語りましたが、教師が思っているほどphonics を大切だと生徒が感じていないことが、生徒がphonics を忘れていく原因だと書きました。
なぜ、生徒はphonics の有用性を感じないのか。
それは、phonics が「使えない知識」だと単語練習導入時に感じ、「使わない知識」へと格下げされるからです。
前回の内容と重複しますが、上のことを予防するために、まず、生徒にphonics の「使い方」を、音のlinking(blending)の活動を通して教えます。
そうすることで、phonics が「使う」知識であることを刷り込みます。
こうしてphonics を「使う」方法を学ぶわけですが、次の壁が立ちはだかります。
それは、phonics の知識だけでは正しい読み方と食い違う単語です。
前回、speakを例に使ったので、今回も同じ例で書きます。
speakをphonics の知識で読もうとすると、
s「ス」p「プッ」e「エ」a「ア」k「クッ」
→「スプエアク」 → 「スペアク」
となります。生徒は「この単語は、今まで一生懸命覚えたphonics を使って読むと、スペアクと読むことが分かった!」と考えます。
ところが、教師はこう発音します。
「スピーク」
生徒の頭の中は「????」となります。
こういう経験を何度も体験することで、生徒は「phonics って使えるときもあるけど、使えないことも多い、汎用性の低い知識なんだなあ」と感じるわけです。
こうして、phonics は「使えない」知識に格下げされていきます。
こういった事態を防ぐためには、digraphの導入が必要不可欠なのです。
digraphとは何か
まず、digraphの指導について書く前に、digraphとは何かについて説明します。
digraphとは、phonics とは別の音を作り出す、2つ以上のアルファベットの特別な組み合わせのことです。
代表的な例で言えば、thやwhでしょう。
phonics 指導の延長で、ここら辺まではしっかりと押さえる英語教師は比較的多いと思います。
ところで(あなたが英語教師だとしたら)、こういったdigraphをいくつ教えていますか?
私の例で恐縮ですが、26字のアルファベットのphonics のあとに、25組教えています。
特に25組という数字に根拠はありませんが、phonics は日本語の「あいうえお」と同じようなものだと最初に生徒に伝えるため、なんとなく同じくらいの数にしようと思ってのことです(ところで、あいうえおって46文字なのに、なんで50音って言うんですかね?)
なかでも、二重母音(eaやaiなどの母音が2つ並ぶ組み合わせ)は最初に教えます。
そのとき、二重母音の基本的なルールも教えます。
それは、二重母音のときは、前の文字の名前読みになる、というルールです。
上の例で言えば、speakのeaは、前の文字のeの名前読みになるので、E(イー)と発音することになります。なので…
s「ス」p「プッ」ea「イー」k「クッ」
→「スプイーク」 → 「スピーク」
となるわけです。
「基本的なルール」と書いたのは、勿論例外もあるからです。
例えば、ooは「ウー(moon, noon)」か「ウッ(cook, book)」と読みますし、ieは「イー(field, piece)」と読みます。
あくまで、二重母音のいくつかを「基本的なルール」で記憶の紐付けをするためのものですので、全てに当てはまるわけではありません。
digraphの指導方法
ここでも、phonics の音のlinking(blending)の手順を使います。
ワークシートでも、パワーポイントでも何でもいいのですが、例えば、ea(イー)を覚えさせるためには、それ単体で覚えさせるだけではなく、そのあとでspeakなどの実際の単語のlinking(blending)をさせます。
具体的に手順を3段階で説明します。
- eaをイーと読ませる
- speakのphonics を「ス」「プッ」「イー」「クッ」のように、1文字ずつ読ませる(ただし、eaは色を変えたり、四角囲いをして、1文字扱いであることを示す)
- linking(blending)をしていく。「ス」「スプッ」「スプイー」「スプィーク」
これが、digraphの指導手順です。
phonics →音のlinking(blending)→digraph
ところで、私が教えているdigraph25組の例を全て挙げると長くなるので端折りますが、中学校で習う単語の中に含まれるdigraphのうち、出現頻度が高いものを選びました。
そして、それ以外のdigraphについては、教科書で出てきたタイミングでその都度説明していきます。
例えば、nationという単語が出てきたら、
「tionはdigraphです。phonics で読めばティオンですが、tionはションと読みます。また、tionは特別なdigraphで、その前につく母音は名前読みになります。なので、ationはアションではなく、エイションと読みます。そうそう、一年生で習ったstationもこの流れで読めますね。では、itionは? そうそう、アイションだね…」のように説明します。
ポイントは、全てを一度に教えるのではなく、細切れに、高い頻度で、何度も指導していくことです。
繰り返しますが、その目的は、phonics という発想が頻繁に「使う知識」であり、「使える知識」であることを理解してもらうためです。
音声指導の必要性
「音声指導の必要性」と書きましたが、これは「rとlの正しい発音の仕方」とか、「arとerとirとurの発音の区別の仕方」とかのことではありません。
どのアルファベット(の組み合わせ)が、どのような音を作り出しているのかを指導していくことを、ここでの「音声指導」という言葉を使う意図だと考えて下さい。
なぜ、そこまでして生徒にphonics やdigraphの有用性を理解させるために、音声指導を続けなければいけないのでしょうか。
それはずばり、単語暗記が効率化されるからです。
その根拠については、次回のブログで書こうと思います。
単語暗記って、中学生が英語を嫌いになる理由として、結構上位に来ると思うので、その負担がグッと軽くなるよ!と言われたら、なかなか情報として価値があると思いません?(逆に怪しい?)
先に言っておきますが、これは英語が得意な生徒や、英語学習を比較的効率よく行ってきた私たち英語教師が当たり前にやってきたことです。
ただそれを言語化するだけですので、あまり期待しないで下さいね(ハードルを上げたり下げたり、大変です)。
しかし、slow learnerがなぜ単語暗記に苦労するのかにも切り込むつもりなので、「あの子は単語練習をよく頑張ってくるのに、なかなか単語が覚えられないんだよなあ…謎だなあ…」と感じている方は、ぜひお楽しみに(またハードルを上げました)!
では、また!